中山 琴未
東京理科大学工学部建築学科夜間主社会人コース3年
経 歴
- 北海道芸術デザイン専門学校建築デザイン学科 卒業
- 現職:設計事務所勤務
現在は建築設計事務所に勤務し、建築設計や現場監理を行っています。新たな環境に身を置き、実務とは異なるアプローチで建築について考えてみようと思い、入社9年目に大学へ入学しました。大学へ通いながらの勤務は、会社では初めての試みでした。そのため「まずはやってみて、何か問題があれば都度ごとに働き方を考えていこう」という、職場の柔軟な対応があり、今も仕事を継続しながら大学生活を送ることが叶っています。それでも入学してしばらくは「実務と学問どちらも中途半端になるのではないか」という不安を感じていました。しかし、設計課題をはじめ、大学で学ぶからこそできることに身を投じることでそういった不安は薄くなっていきました。なかでも多くの学びがあったのは IUW(Inter-University Workshop)という、大学・まち・専門家の協働によるワークショップに参加したことです。様々な大学・大学院チーム(建築意匠系の研究室・スタジオ)が参加するワークショップであり、他学年の学部生や院生と共に約半年ほどかけて取り組みました。2年生で初めて参加したときの課題は「東北復興~建築と記憶」というもので、宮城県七ヶ浜町が対象でした。土地の歴史や災害の記録などをリサーチするとともに、実際に七ヶ浜町を訪れ、フィールドワークと地域の人への取材を行いました。そして、そこから見えてきた人々の暮らしや地場産業の在り方などを手掛かりに、地域の人々の拠点となる公民館を点在させ、巡りたくなるまちづくりの提案をしました。翌年は和歌山県和歌山市を対象に「木と水のまちづくり」というテーマが与えられました。商店街の衰退や、空地が増える中心市街地など、多くの地方都市が抱える共通の問題に対して、碁盤の目の町割や水路などを和歌山の財産と捉え、その財産を活かした和歌山市らしいまちづくりの提案をしました。IUW において、設計は製図室の中だけで完結するのではなく、まちを歩き、そこで暮らす人々の声を聞いて、考えるというプロセスを体験することができ、設計製図の授業とは異なる角度からの学びがありました。また、他大学の学生や先生方との交流の中から全く異なる建築表現や価値観に触れ、大学の垣根を越えて多くの刺激を得ることができました。こうした活動と多様な他者との関わりの中で、これまで以上に地域社会に対しての意識が強くなりました。今後も学問と実務、双方の領域から建築への思考を深め、自身の建築表現を磨いていくとともに、これからの社会においての建築の在り方や人々の暮らしについて追求していこうと思います。